カムダス☆ドロリス

エッセイといふものに憧れたオタクの成れの果て

焼肉屋に行った時の話

焼肉という食べ物自体は好きだが、焼肉屋というものは少々厄介者である。
食べる為には焼かなくてはいけない。焼くためには注文をしなくてはならない。大勢で行くと必然的に役目が分かれてしまう。

そんな焼肉屋での過ごし方を覚えたのも某古書チェーン店のアルバイトの時であった。

お店からも私の自宅からも近い場所にリーズナブルな焼肉店が出来、店の食事会などで度々訪れることがあった。

最初に行ったのは、元アルバイトで現社員のお兄さんが転勤する際の送別会だっただろうか。
私は家族以外と焼肉屋に来たことがなく、元店長さんが焼きながら喋りながら上手にやってたのにただ惚れ惚れしていただけだった。
私は酒ばかり飲んでいた。
元バイト現社員組は何人かいて、男性が三人だった。みんなお兄ちゃんのような存在だった。
私が酒ばっかり飲んでいるとそれをつっこまれ、「いやでも……マッコリってわりと女子が好きな感じしません?」とよくわからない返答をして「そんなところで女子力強調されても」と戸惑わせたりしていた。マッコリはおいしい。

次は、前記事でのおっかない女店長が去り代わりに来た新店長の歓迎会。
歓迎会だけど机が離れた為、歓迎などはそちらに任せ、しがないバイト同士のテーブル(男ばっか)で(彼らの為に)肉を焼き、私はキムチを喰らいながらハイボールを煽り、当時ムカついてたバイトでの出来事をひたすら愚痴っていた。ただの酒癖悪いおばさんである。

次は、頼りになっていた男性従業員の送別会。
この時も主役とテーブルが離れ、年下男子バイトと同じテーブルとなった。出発前から姉心(母性のようなもの)が発揮され、弟のような男子たちに肉を焼き、勧め、自分は酒を飲みキムチなどを食べていた。

弟たちとは仲が良く、歓送迎会関係なくただ楽しい飲み会としてその焼肉屋に訪問したりもした。
男子三人はわりと酒飲み、うち一人はウワバミレベルだったので、偉い人もいないしくだを巻く為にもたくさん飲ませ、肉を焼く役は私が担った。年下ながらに精神年齢の高い男子がくだを巻いているのを聞いてるのが好きだった。

今ではすっかりそんな機会もなく、最近一度年下の男子と焼肉屋へ行ったが、ノスタルジーに浸って感傷的になってしまった。
甲斐甲斐しく世話を焼きたくとも、その切なさが邪魔をして上手く行かない。愛おしさもある。私は、ただ見ているだけで幸せだった。

自分より、相手に楽しんで欲しい。
皆が楽しければ私も楽しい。
そんな気分にさせてくれるお店だ。焼肉屋って。